目の前にあるモノのバックストーリーを知るだけで見える世界が変わる。
そこにあるものが “読みもの” になる。
そんな連載コンテンツ『読みものになるカフェ』
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KAN,MAに来るとまず、お席へ案内されます。
案内といっても、言われるのはこれだけ。
「お好きな席へどうぞ。」
混雑していない限り、基本的に座る席はお客さんに決めてもらいます。
ほんとに好きな席でいいです。
これ、オープン当初からそうだったのかというと、そうではなくて、
オープンしたての頃は、お客さんの人数に合わせて、スタッフが席を決めて、その席まで案内してました。
でも、やめました。
なんでやめたのか、今日はそんなお話。
ぼくがKAN,MAの立ち上げに関わることになって、最初に話し合ったことは、
“ソファ置きたい?どうする?”
という議題。
この議題に対してぼくの意見は、“置きたくない”でした。
なぜかというと、ソファ席を作ると、そこがいちばん良い席になってしまうと思ったからです。
当時ぼくは、お店の入り口を入って一目で、「あそこがいちばん良い席だ。」ってわかるお店ってあまり好きじゃなかったんです。
だからソファ席を作ったら、そこ以外の席が2番目、3番目の席になってしまうので、
それってなんか嫌だなーと。
この時ぼくは、席に優劣があると思っていたわけです。
結局ソファは置くことになったのだけど、
席に優劣をつけていた僕は、お客さんになるべくいい席を案内してあげようとしました。
ソファ席がいちばん良い席、次が窓際、カウンター席は他の席が空いていなかったら。
こんな優先順位を勝手に決めて案内していたのだけど、
ある時、気付いたんです。
KAN,MAのお客さんがよくする会話があるんです。
「あの椅子も座ってみたいね。」
「あの席からの景色も素敵よ。」
なんて話。
決定的だったのは、カウンターに座っていたお客さんが、
「カウンターから見える窓の景色がとてもいい。」
って言ってくれたんです。
これで、僕は気づいたんです。
KAN,MAの席には、優劣がありませんでした。
1番もないし、2番もない。
どの席にもそれぞれいいところがあって、座り心地や見える景色も違う。
僕が勝手に優劣をつけて、勝手にお客さんを案内してて、
あーなんかやだなーって思ったんです。
反省をしたんです。
だからKAN,MAでは、「お好きな席へどうぞ。」と言われます。
なので遠慮せず、どうか色んな席に座って、色んな座り心地を楽しんで、色んな景色を眺めてみてください。
自分のお気に入りの席を見つけてみてください。